街から人が消えた
コロナ前からTeracyを始めていた自分は、リモートワーク自体が普及するには一定の時間がかかると想定していた。しかし、その想定は大きく外れパンデミックにより世界の働き方が一変したのだ。
世界は不安に包まれ、急激な変化に間に合うはずもなく強制的に働き方や暮らし方、人々の価値観までもが変わっていく、異様な雰囲気だった。
リリース後反響、プロダクトのクラッシュ
コロナがやってきたことと、プロダクトの一定の自信を持っていた状態だったのでリリースをすることにした。そこで 2020.03.31、そうだ記憶を遡ると緊急事態宣言が発令される4月1日の1日前にリリースを打ったのだ。
以下が当時の初期バージョンのプロダクトである。
ルーム名からステータスを共有でき、すぐに話しかけられることと、仲間の存在を感じながら一緒に働く雰囲気の醸成を簡単にできることを目指した。
また社内の会議をスケジュール連携、リモート環境で発生する同期会話をバンドル化しシームレスにすることを目指していたのだ。
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当然、状況的にもユーザーが大量に流入しX(Twitter)では期待の声が多く寄せられた。
しかし、プロダクトの技術的な課題により多くのユーザーに不具合(Bug)が発生した。
この時のことを振り返り今でも少し辛い記憶が蘇る。
世界は今この瞬間に助けを求めているのに、
そのために作ってきたのに、どれだけ俺は未熟で非力なんだと。
救いたい人を救える力を持つために、強くなりたくて強がって、19歳から起業しようやくその場所に立っているのに。
人々を救えない自分の弱さに無性に腹が立った。
これで本当に世界を変えられるのか?
プロダクトのクラッシュを機に、改めて問い直すことにした。
それは、重要な問いだった。
「これで本当に世界を変えられるのか?」だ。
競合製品が次々と登場する中、自社製品を含め、「このままではバイラル性に欠け、コロナ禍による一時的な需要増加に過ぎない。真のイノベーションの核心が欠けている」という認識に至った。
今までに数百件、いや数千件のヒアリングやインタビューをチームで繰り返してきた中で、人々が求めている優れた体験には至っていないという認識があったからだ。
また需要過多だからこそアクティベーションするプロダクトも、セルフサーブでピュアにアクティベートできるほどの体験設計になっていないように感じていた。
当時の状態でも、進めれば事業として成立したかもしれない。
顧客がつき、売上が生まれ、要望に応えて開発を続ければ、順調に成長しただろう。
元々の起業経験から、モノとマーケットがある状態で売上を生み出すことは簡単だという自信があった。
しかし、今思うと、その道を選ばなかった決断は正しかった。
一度構築された製品体験とそれに適合した組織は、簡単には変えられないからだ。
当時は周りから
「営業でもっと売ればいい」
「なぜもっとプロダクトをPRしないのか」
と散々言われた。
コロナ禍で需要が急増している今に、一気に事業を立ち上げるべきというアドバイスだ。
理にかなっているように見えた。
しかし、申し訳なかったが、それらのアドバイスすべてへ、耳を塞いでいた。
なぜなら「これでは世界を変えられない」ことを直感的に理解していたからだ。
そしてその状態で営業や導入支援が必要なプロダクトをつくり出すことは自分の目的から逆算した時に圧倒的なリスクだった。
繰り返すと「一度構築された製品体験とそれに適合した組織は、簡単には変えられない」のだ。
世界を変える可能性を確信できない限り、躊躇なくゼロから作り直す覚悟があった。
競合がコロナ最中の煽りを受け急成長するのを横目に、私たちは世界を変えうる本質的な要素を探す旅に出かけた。