01
場所の制約で人の可能性を諦めない
Founderの森井は「対人恐怖症」に陥り、2016年から世界20カ国以上への旅に出ました。そうした中で、人が場所に生き方を縛られてしまう場面に何度も遭遇しました。笑顔が素敵で一緒にご飯を食べに行ったインドの青年はスラムに住む以外の選択肢がなかったり、ふざけている森井にも熱心に英語を教えてくれたフィリピンの先生の時給が200円だったり……、その他にも多くの出会いがありました。
思えば、日本でも地元で働く友だちや、寡黙で誠実だった父もそうした彼らと変わらない部分があるのかも。そんな時に、こんな想いが浮かんだのです——場所の制約が機会格差を生む。それを取り除くことで、人が持っている可能性をもっと解き放つ方法はないだろうか?
02
格差と孤独をテクノロジーで乗り超える
旅先でも「対人恐怖症」で深く人と関わることが難しく、孤独には苛まれます。それでも「なにかを創りたい」という気持ちを森井は強く持っていました。そんなある日、たまたま旅の中でSkypeを使って遠い場所にいる仲間と一緒に作業をすることを体験したのです。
時差も距離も関係なく、創造的なことに誰かと共に向き合って、笑いが生まれた瞬間。「テクノロジーの力で人のつながりを再構築して、孤独をやわらげることができる」ことを身をもって知ったのです。「社会の端にいる自分ですらつながることができた」というリモートワークでの実感が、場所や環境による機会格差を埋めるためのヒントになったのです。
03
Connectedという反直感
開発はそれでも簡単ではありませんでした。パンデミックもあり、リモートワークそのものは急速に世の中に広まりました。それでも「人をワークさせるツール」はあっても「同時に孤独を埋めてくれるツール」は今もまだありません。そんな中、Teracyが2024年の時点で6年間の開発期間、3億円の自己投資を行って、ようやくたどり着いたコンセプトが「Connected(すでにつながっている状態)」という概念。「人々がすでにつながっている状態」を提供するという、反直観的なアプローチです。
世の中にコミュニケーションツールはたくさんあるものの、いずれもが「オンの時にのみつながる断片的な、チャットや電話」となります。ですが、人と人が本当に求めているものは、オフな状態でもすぐそこにいる「存在」への安心感だということへの気付きです。今度は、デジタル上で実現の難しい「雑談や沈黙、自然と一緒の時間を過ごす」ということを、どのように実現するかの旅へとなりました。
04
「つながる」から始める「ただそこにいる」コミュニケーション
Teracyが目指すのは、単なるコミュニケーションツールの進化ではありません。場所によって生まれる「機会格差」と、デジタル社会と情報の加速で多くの人が抱える「孤独」を、テクノロジーの力で同時に乗り越えること。Slackが“情報”のレイヤーを、Zoomが“会話”のレイヤーを更新したように、Teracyが取り組みたいのは“存在”のレイヤーをより良いものにしていくことなのです。
朝、画面を開けば、気心しれた誰かがそこにいる。そうした場面で必要になるものは、「映える写真でも、役に立ちそうなTIPS」でもないはずです。こうした特別ではない日常を誰かと分かち合う場所を作り、一人ひとりの孤独に寄り添うことで、多くの人が「つながれない状態」を解消していきたいのです。