テクノロジー、デザイン、起業家精神……これらを15歳から全寮制で学ぶ、日本の教育の常識を覆す学校が徳島県にあります。
「日本の田舎町にシリコンバレーのような場所を作りたい」という壮大な想いを掲げ、2023年に開校した神山まるごと高専です。

インプットだけでなくアウトプットを重視する教育は、様々な分野を実践的に学び、未来を変える力を育む独自の教育システムとして注目を集めています。

15歳から20歳までの間にテクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学べるユニークな高等専門学校。この学校の大きなイベント「まるごと祭2025」は秋に開催されます。

まるごと祭2025「まるごと祭」は、神山まるごと高専が年に一度開催する特別な高専祭。神山まるごと高専の魅力を“まるごと”感じられる2日間。こmarugotosai.jp
テクノロジー体験展示、アート作品、授業成果物、地域の方々と共につくるコンテンツ、神山まるごと高専生になれる体験、物販・飲食、ステージ発表など、多彩なプログラムが揃います。
そんな神山まるごと高専の学生たちが、秋に開催される学校最大のイベント「まるごと祭2025」に向けて、大きな壁を乗り越えようとしています。夏休み期間中、全学生が全国にバラバラになってしまうという、全寮制ならではの困難です。
この逆境をいかに乗り越えてきたのか、この困難をどのように乗り越え、高専祭の準備を進めてきたのか?実行委員会のディレクターを務める尾崎仁瑚さんに、その裏側を聞きました。

学生主導から学校全体へ。5倍の規模になったまるごと祭
──今年で3回目となるまるごと祭ですが、今までと違うポイントはありますか?
1年目は神山町内のみに向けて、2年目は初の一般公開でした。去年は一般公開が初めてでわからないことだらけで、正直不完全燃焼なところもありました。もっとやれるはずだ!と思ったんです。
そこで、学生だけの運営から学校スタッフ(教員や事務職員など)を巻き込んで、学校全体で取り組む体制にシフトしました。
使えるものや予算がぐっと増えた分、求められるクオリティも上がっているので、いいものを作りたいと考えています。
──去年までのまるごと祭とは大きく変わっているのですね。実行委員は何人くらいの組織なのでしょうか?
学生とスタッフあわせて60名です。これまで神山まるごと高専にあった活動のなかで、一番大きなチームになりました。去年は13名だったので5倍近く増えています。昨年までは、委員会外の学生たちの企画をオーガナイズするような実行委員だったのですが、今年は委員会が主体になって企画を立てて実行もしています。
今までのオンラインツールだけでは不十分?フルリモートで直面した夏休みの「コミュニケーションの壁」
──夏休み期間中の実行委員活動はどのように進めてきたのですか?
夏休み期間は神山まるごと高専の全学生が寮を離れて、地元に帰ったり、東京でインターンをしたりして過ごします。実行委員会としては、夏休みがとても大切な時期なのですが、全員バラバラに過ごすことになるので大問題です。
神山まるごと高専では、普段の学校生活からコラボレーションのためのツールを活用しています。
Google workspace(カレンダー、ドキュメント、スプレッドシートなど)
Slack
Notion
これらを使って日々プロジェクト管理をしたり、情報共有をしたりしています。離れていてもツールを活用して、まるごと祭2025の準備はオンラインで進めてきました。
しかし、昨年の夏休みと今年の春休みの期間中、どうしてもコミュニケーションが滞ってしまう問題がありました。いつもは対面で話せて、しかも同じ寮で暮らしている分、コミュニケーションのギャップが大きくなってしまったんです。
──それは大変ですよね。問題を受けて、今年の夏休みに何か変えた点はありますか?
夏休みも途切れずにプロジェクトを進めるために、寮に「一緒にいる感じ」をなんとか再現したいと思い、コロナ禍の時に流行ってニュースで見ていたバーチャルオフィスのサービスでいいものがないかと探しました。
その時に見つけたのがTeracy(テラシー)というコワーキングアプリです。離れていても相手のオンライン状況や使用アプリケーションからステータスが表示され「つながり」を感じられます。具体的な機能としては、ステータスの表示、チャット、ビデオ通話、画面共有などがあります。
Teracy | リモートワーカーのためのコワーキングアプリ。ひとりでいても、つながっている。 離れていても、共に前へ。teracy.io

無料なのでとりあえず使ってみるか、とTeracyの導入にトライしてみました。まずは実行委員の一部のディレクターチームだけで使ってみて、良さそうだったんです。
それまでバーチャルオフィスを使ったことがなかったので、正直なところ学生メンバーみんながTeracyというツールを使ってくれるのかが不安でした。
夏休みに入る前、最後の対面ミーティングのその場で実行委員全員にダウンロードしてもらいました。とくに「暇な時は入っておいてね!」と強調して伝えました。
ちょうどTeracyが正式ローンチされた直後だったので、「リリースされたばかりの新しいアプリだよ!」と紹介すると、みんな興味を持ってくれましたね。
うまく使いこなし始められるように、TeracyのチュートリアルをNotionで作って共有する工夫もしました。

チュートリアルNotionの内容
また、Teracyの初期アバターのスタイルの似顔絵アイコンをAIで生成して、楽しみながらわいわい導入できました。
結果的に、多い時には40人がTeracy上にいる状況になっています。みんなに受け入れられたんだなと感じますね。

ただのオンライン会議じゃない。Teracyが実現した「雑談」と「一体感」
──具体的にTeracyをどう使っているんですか?
チームごとや全体のミーティングをTeracyで行っています。実行委員のスペースのなかにルーム「会議室」をいくつか作りました。他にも「のんびり休憩部屋」や「開発者詰所」というルームを作っています。
アイコンが集まっていると、いま仲間が頑張っていることが視覚的にわかるのがいいですね。
Google meetでも会話をする機能としては十分なのですが、他のチームが開催しているミーティングに入りづらかったんですよね。でもTeracyなら気軽に部屋に入って行って、はじっこで聴いていられます。「耳だけ参加」することもあります。
──そんなふうにTeracyを使っているんですね。ただ入れておしまい、ではなく導入にも使い方にも工夫が感じられます。それでは最後に、この記事を読んでくださっている方へメッセージをお願いします。
1年に一度のまるごと祭2025は、10月25日(土)26(日)の開催です。ちょっとでも興味を持っていただけたら、まずはホームページを覗いてみていただけると嬉しいです。
まるごと祭2025「まるごと祭」は、神山まるごと高専が年に一度開催する特別な高専祭。神山まるごと高専の魅力を“まるごと”感じられる2日間。こmarugotosai.jp
また入場にはチケットが必要ですので、来てくださる方はPeatixでのチケット購入をどうぞお忘れなく。
徳島の神山町までわざわざ来ていただいても、後悔させない内容にします。楽しみにしていてください!
夏休みをフルリモートで乗り越え、学生たちの絆を深めたTeracy。その繋がりは、まるごと祭2025当日の企画や展示にきっと表れています。アイデアが生まれる「開発者詰所」での議論、休憩部屋での何気ない会話から生まれた新しい視点。オンラインの垣根を越えて創り上げられた、学生たちの情熱をぜひ会場で感じ取ってください。
そして、今回のチャレンジは、神山まるごと高専だけの物語ではありません。教育業界の常識に挑む彼らのように「離れていても協働できる」という新しい学びの形を、日本社会全体、そして世界へ広げていきたい。 Teracyは、そんな未来の教育においてもインフラになることを目指しています。
Yuka Ogi
SHARE THIS POST
More in
Story